別に知らなくても1ミリも困らないことなんですけど、韓国の街を歩いていると、どうしても気になることがあります。
それは、真冬なのに、みんな当たり前のようにアイスコーヒーを飲んでいること。
冬の韓国は、本当に寒い! つま先もまつ毛も凍っちゃうくらい寒い日もあります。
ダウンコートを着て、マフラーを巻いて、手袋までして歩いているのに、手には冷たいアイスコーヒー。
初めて見たときは、「えっ、寒くないの?」と不思議に思いました。
でも、よく考えてみると、韓国では真冬でもアイスアメリカーノを飲む人が本当に多いんです。
せっかく韓国に住んでいるので、今回はこの素朴な疑問を、ちょっと真面目に考えてみようと思います。
そもそも、なんで「アメリカーノ」?
韓国でカフェに入ると、よく耳にする言葉があります。
「アア、ジュセヨ(아아 주세요)」
初めて聞いたときは、「え、アア……? 何事?」と頭の中がハテナマークでいっぱいでした(笑)。
実はこれ、「アイスアメリカーノ」の略。「アイス(아이스)」と「アメリカーノ(아메리카노)」の頭文字を合わせて、「アア(아아)」と呼ぶんです。
ちなみに、ホットアメリカーノは「トゥア(뜨아)」。こちらは「熱い」を意味する韓国語の「뜨거운(ットゥゴウン)」から来ています。
「アア」に「トゥア」。
最近は、私の生活圏ではあまり耳にしなくなった気がして、「もう死語なのかな?」と思い、夫に聞いてみたら、「会社では普通に言うよ」とのこと。どうやら、私の生活圏で聞く機会が減っただけだったようです(笑)。
そこまで短くしなくても……とは思うけれど、略して呼ぶ文化って、日本にもありますよね。
ちなみに、韓国語でスターバックス(스타벅스)の略語は「스벅(スボッ)」。
……もう私は全くついていけません(汗)
「凍え死んでもアイス」って本当?
そして、私がさらに衝撃を受けたのが、「オルチュガ(얼죽아)」という言葉です。
正式には、オロ チュゴド アイス アメリカノ(얼어 죽어도 아이스 아메리카노)。
これをそのまま訳すと……
「凍え死んでもアイスアメリカーノ!」
初めて聞いたときは、「いや〜、そこまで?」と半信半疑だったけれど、雪の日でも当たり前のようにアイスコーヒーを片手に歩く人たちを何度も見ていると、「本当なんだ」と認めるしかありませんでした(笑)
もちろん、本当に命がけという意味ではありません。
「どんなに寒くても、私はアイスコーヒー一択!」という人たちを表す、韓国らしいユーモアのある言葉です。
真冬でもアイスコーヒーを飲む人が多いだけでも十分驚きだったのに、そんな言葉まであるなんて。
韓国料理のあとに冷たいものが欲しくなる
韓国料理って、おいしいですよね。
キムチチゲやサムギョプサル、ヤンニョムチキンなど、辛かったり、熱々だったり、味がしっかりしていたり。食べているうちに体がポカポカしてきたり、食後にはちょっと口の中をさっぱりさせたくなったりします。
だからなのか、韓国では食後にアイスを食べることもよくあります。
そんな光景を見ているうちに、「なるほど、食後は冷たいものでさっぱりしたいんだな」と思うようになりました。もしかすると、アイスコーヒーもその延長なのかもしれません。
日本だと「飲み会のシメはラーメン」なんてよく聞きますよね。それに対して韓国では、食事のあとに冷たいものを楽しむのも、ひとつの定番なのかな、と。
もちろん、それだけが理由ではないと思いますが、真冬でもアイスコーヒーを飲みたくなる気持ちが、少しだけわかる気がしました。
冬でもアイスがおいしい理由
韓国の冬は、本当に寒い。
ところが、一歩建物の中に入ると、その寒さとのギャップにびっくりします。
韓国には、伝統的な床暖房「オンドル」の文化があります。家の中はもちろん、お店やカフェも暖房がしっかり効いていて、外の寒さが嘘のように暖かいんです。
日本に住んでいた頃は、リビングは暖かくても、廊下やトイレは寒い……なんてことがよくありました。でも、韓国では家全体がじんわり暖かい。この快適さ、最高だなぁと思います。
私は以前カナダに住んでいたこともあって、カナダも家全体を暖める暖房設備が普及していますが、温風などで室内を暖めるセントラルヒーティングが一般的。
それに対して、韓国のオンドルは床そのものが暖かくなるのが特徴で、足元からじんわり熱が伝わってくる、あの独特の心地よさがあるんです。
外は凍えるほど寒いのに、家の中では薄着で快適に過ごせる。
そんな環境なら、暖かい部屋で冷たいアイスを食べるのも、なんだか自然なことに思えてきます。
パリパリ文化とアイスコーヒー
韓国には、「パリパリ(빨리빨리)」という言葉があります。
日本語に訳すと、「早く、早く!」。
韓国で暮らしていると、この「パリパリ」のスピード感を感じる場面が本当にたくさんあります。
そのひとつが、朝やお昼時のオフィス街のカフェ。
会社員のみなさんが次から次へとお店に入ってきて、注文して、受け取って、風のようにサッと出ていくんです。
なんなら、お店に向かって歩きながらスマホアプリで注文しておいて、到着した瞬間に出来上がったコーヒーを受け取り、そのまま一口飲みながら去っていく人も珍しくありません。
この光景を見るたびに、「店員さんの手の早さも、お客さんの無駄のない動きも、どっちも神業だな……」と感心してしまいます。
そこでふと思ったのが、ホットコーヒーとアイスコーヒーの違い。
ホットコーヒーって、淹れたてだと熱くて、すぐにはゴクゴク飲めませんよね。でも、アイスなら受け取った瞬間から飲めます。忙しい朝には、この違いも意外と大きいのかもしれません。
もちろん、「韓国の人はみんなせっかち!」と言いたいわけではありません(笑)
ただ、忙しい毎日の中で、すぐに飲めて、さっと次の行動に移れる。そんな手軽さも、アイスアメリカーノが好まれる理由のひとつなのかな、と感じています。
いつの間にか、カフェが日常の一部に
韓国に来てから10数年。
そのあいだに、韓国のカフェ文化はものすごいスピードで変化し、すっかり生活に定着したように感じます。
まだ1人で海外旅行をしていた頃、韓国にも来ていたけれど、カフェに入りたくてもお店があまりなくて、大手チェーン店くらいしかなかった記憶があります。(喫茶店らしきものはあったんだろうけど、1人では入りずらくて)
それが今では、「カフェ、多いなぁ」と。
場所によっては、右を向いても左を向いてもカフェ、カフェ、カフェ!
スターバックスのような大手チェーンはもちろん、「ちょっとそこまで」の距離に格安カフェがあったり、路地裏を覗けば、こだわりの詰まったおしゃれな個人カフェがあったり。
朝の通勤前に一杯。ランチのあとに一杯。友達とおしゃべりしながら一杯。勉強しながら一杯。
韓国では、「コーヒーを飲む」というより、「カフェに寄る」こと自体が生活の一部になっているように感じます。
最近は、カフェインの摂りすぎを気にして、デカフェを選ぶ人も見かけるようになりました。
私も毎日のようにカフェに行くのですが、朝からおばあちゃんたちが集まって、楽しそうにおしゃべりしていることも(笑)
いつ行っても同じメンバーなので、「今日も集合してるな〜」なんて、勝手にほっこりしながらコーヒーをいただくのが、私の密かな楽しみだったりします。
そんなふうに、コーヒーを飲む場所であり、人とおしゃべりする場所であり、ひとりで過ごす場所でもある韓国のカフェ。
私にとっては、真冬にアイスアメリカーノを片手に歩く人たちも、すっかり見慣れた韓国の日常の風景になりました。
さいごに
ずーっと私が疑問に思っていた、「なんで真冬なのにアイスコーヒーなの?」問題。
今回この記事を書くにあたって、周りの韓国人にも「なんで冬でもアイスなの?」と聞いてみました。
でも、返ってきた答えは「なんとなく」「もう習慣だから」というものがほとんど(笑)
そもそも理由を考えたこともないようで、むしろ「なんでそんなことが気になるの?」という反応でした。
ちなみに夫は、「もう中毒みたいなものじゃない?」だそうで(笑)
確かに、毎日のようにアイスアメリカーノを飲んでいる人たちを見ていると、あながち間違いでもないのかもしれません。
……とはいえ、私は今でも頑なに一年中ホットコーヒー派です(笑)
そんな私が、もうひとつ不思議に思っていることがあります。
韓国の格安コーヒーチェーンでは、お店によって、アイスアメリカーノの方がホットより高いことがあるんです。
氷を作るのに手間がかかるから?よく売れるから?
……また私の理解を超える疑問が(笑)
それでも、みんな迷わずアイスを選ぶんですから、やっぱり韓国の「アア愛」は本物なのかもしれませんね。
日本と韓国は近い国なのに、暮らしてみると「えっ、こんなところが違うんだ」と思うことがたくさんあります。
知らなくても困らない。でも、知るとちょっと面白い。
そんな韓国の日常を、これからもゆるくのぞいてもらえたら嬉しいです。


