息子は、生まれた直後から音にとても敏感で、
ちょっとした物音でもすぐ泣いてしまい、産後3日間はほとんど眠れなかった苦い記憶があります。
その頃は「HSC」という言葉も知らず、
ただ「どうしてこんなに泣くんだろう」と思っていました。
成長するにつれて、ずっと泣き続けることはなくなりましたが、
音への反応は、形を変えながら続いてきた気がします。
お店に入れなかったり、学校の行事をお休みしたこともあって、
親として、どう関わるのがいいのか試行錯誤しながら生活しています。
この記事では、そんな息子の音にまつわる話と、
そのときどきで悩んだことや考えたこと、
そして最近、少しずつ変わってきたなと感じていることについて書いています。
音に敏感だと気づいたきっかけ
特に「音に敏感かも」とはっきり意識するようになったのは、
赤ちゃんの頃、ぐっすり眠っていると思っていても、
些細な「カタッ」という音で目を覚ましてしまうことが何度もあったからです。
家族や友だちの赤ちゃんを見てきましたが、
こんな反応をする子は見たことがなかったので、
「これは大変な育児になりそうだな…」と思った記憶があります(汗)。
たとえば、生活音。
ドアの閉まる音や、物を置く音、歩く音まで。
ほとんどの人が気にも留めないような音で、
突然固まったり、泣き出したりすることばかりでした。
外出先でも同じで、
お店に入った途端に不安そうになることが多く、
あとから振り返ると、音楽やアナウンス、人の声が重なる場面が多かった気がします。
当時は「こういう気質なんだろうな」と思いながら、
どこに連れていくにも慎重になっていて、
気づけば私も夫も体重がどんどん落ちていきました(苦笑)。
そんな経験を重ねる中で、
「この子にとっては、音が思っている以上に大きな刺激なんだな」と感じるようになりました。
どんな場面で困ったのか
音への敏感さは、家の中だけでなく、外に出るとより分かりやすくなりました。
まず困ったのが、お店。
キッズカフェやレストランもNGでした。
人が多い雰囲気を察知して緊張するのに加えて、
店内に音楽が流れていたり、アナウンスがあったり、
人の声や物音が重なっている環境にすっかりダウン。
保育園も、最初は子どもが好きそうな音楽を大きな音で流したりする
いわゆる一般的な園に通っていましたが、
結果的に音の少ない落ち着いた園へ転園することになりました。
学校に入ってからも、似たような場面はありました。
行事やイベント、放送が多い日などは、
普段より疲れやすかったり、気持ちが不安定になったりすることも。
映画館に行く行事があったときは、思い切ってお休みしたこともあります。
暗くて閉鎖的な空間に、刺激の強い映像や音楽。
HSCの子にとっては、苦手な要素が詰まった場所のひとつですよね。
こうして振り返ると、
いくつもの音が重なる環境やその場の雰囲気などが、息子にとっては特に負担だったのだと思います。
親として悩んだこと・迷ったこと
いちばん悩んだのは、
このまま音を避け続けていいのか、それとも少しずつ慣れさせたほうがいいのかということでした。
避ければ落ち着いて過ごせる。
でも、その分、行けない場所やできないことは増えていく。
一方で、無理をさせると、その場は乗り切れても、あとでどっと疲れてしまう。
どこまで配慮して、どこから本人に任せるのか。
その線引きが、正直いちばん難しかったです。
周りの子が普通にできていることが、
息子には大きな負担になっているように見える場面もあって、
「このままで大丈夫なのかな」と不安になることもありました。
一方で、音が原因でつらそうにしている姿を見るたびに、
「今は無理をしなくていいのかもしれない」と思う自分もいて。
その間を行ったり来たりしながら、
はっきりした正解が見えないまま、試行錯誤してきた感じです。
今振り返っても、
あのときの判断が正しかったのかどうかは分かりません。
ただ、その時その時で、
「いま、この子にとって一番負担が少ない選択は何だろう」と考えてきました。
実際に考えたこと・試そうとしたこと
いろいろ迷った末に、まず思ったのが、
家の中くらいは、できるだけ刺激を減らしたいということでした。
その中で、当時考えたり、試そうとしたのはこんなことです。
保育園時代は、正直かなり厳しく制限していましたが、
小学生になってからは、
「なくても困らない環境にしてみた」という感覚に近いです。
また、小学校での行事に参加するにあたって、
一時期は、イヤーマフやノイズ軽減のヘッドフォンを
使わせたほうがいいのか、本気で考えたこともありました。
実際に調べてみた中で、
小児科医推奨モデルのイヤーマフは、
イベントや行事のような騒音環境でも対応できるという声が多く、
今後のために準備しておこうと思っています。
息子ほどではありませんが、
実は私自身も音にかなり敏感なほうで、いわゆるHSP気質です。
息子の反応を見ていて、
「これ、私も苦手だな」と感じる音が重なることも多く、
なんとなく息子の気持ちが分かる気がします。
一方で、音を減らす工夫は、
子どもだけでなく、自分自身のためでもありました。
テレビや音楽を流しながらの育児は、
私の場合、どうしても集中できずイライラ。
そんなこともあって、
息子が生まれてから、すっかりテレビから離れた生活になりました。
世間のニュースには少し疎くなりましたが、
それでも活字を読みたくなることはあって、
そのころからKindle(キンドル)にお世話になっています。
音を出さずに読めること、
スマホと違って子どもがあまり興味を示さないこと。
小学生になった今も、息子の隣で気楽に読めるところが気に入っています。
育児や気質についての本も、
Kindle Unlimitedの読み放題対象になっているものが多く、
最初はそういう本を読み漁っていた記憶が(苦笑)。
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少しずつ変化が見えてきたこと
小学2年生の息子も、音への敏感さがはっきり「なくなった」というわけではありません。
今でも苦手な音はあるし、映画も半分くらい見たら「もういい」と言って出てくることもあります。
つい最近までは、風船を見るだけで怖いと泣きそうになることもありました。
割れたときの音の記憶が残っていて、
それを想像しただけでも嫌だったのだと思います。
それでもここ最近は、
「前だったら難しかったかも」と思う場面が、少しずつ増えてきました。
風船も、授業の中でやっとのことで克服したようです。
(なぜか学校で、やたらと風船を使うことが多い…)
そしてもうひとつが、学校のダンス教室の話。
放課後は部活に行っていますが、同じ時間帯にダンス教室もあり、
どちらか選んで参加もできます。
これまで音が理由でダンスは避けてきましたが、
2年生の冬のある日、息子のほうから
「ダンス教室に一回行ってみたい」と言い出したときは、正直びっくりしました。
良い経験になるかもしれないと思って送り出してみると、
帰ってきてから「音はもう平気だった!」と言っていて。
来年は、ダンスも経験させてみてもいいのかな~、と思っています。
ここまで来るのに時間はかかりましたが、
音の受け取り方が少し変わってきたのか、
以前より不安な気持ちが薄れてきたようで、
親としては、良い変化だなと感じています。
さいごに
音への敏感さが、完全になくなったわけではありません。
今でも苦手な音はあるし、状況によっては疲れてしまうこともあります。
ただ、以前と比べて変わったなと感じるのは、
「ダメそうなとき」と「大丈夫そうなとき」を、
本人なりに少しずつ判断できるようになってきたことです。
親としては、
「どこまで配慮するか」「どこから任せるか」で
今も迷うことはありますが、
以前ほど答えを急がなくなった気がします。
無理に慣れさせようとしなくても、
環境やタイミングが合えば、
子ども自身のほうから一歩踏み出すこともある。
今回のダンス教室の件は、そんなことを教えてくれました。
これからも、音が苦手な場面はきっとあると思います。
そのたびに立ち止まったり、回り道をしたりするかもしれません。
それでも、
「今は無理しない」
「いけそうなら、少しやってみる」
そのくらいの距離感で、これからも向き合っていけたらと思っています。




